C型肝炎ウイルス(HCV)の感染経路と治療法

A型やB型の肝炎ウイルスが検出されない肝炎の患者から遺伝子の断片が分離されたことをきっかけとして、1989年に発見されたC型肝炎ウイルス(HCV)。このHCVの存在によりそれまで「正体不明」とされていた非A非B型肝炎ウイルスの背反がHCVであることが判明したのです。

ウイルスマーカー検査

HCVの感染は主に血液を介してですが、感染力がそれほど強くないため。セックスで感染したり、母子感染のリスクはほとんどありません。一昔前は、HCVで汚染された血液による輸血が一大感染ルートとなっていましたが、1990年代に輸血の検査体制の強化、ディスポーサブル(使い捨て)の医療器具の普及もあり、輸血によるHCV感染は激減しています。今日、感染リスクが懸念されているのは医療従事者の針刺し事故、タトゥー、薬物などの注射器の使いまわしです。

HCVの感染初期は自覚症状が現れないこともありますが、しばらくすると全身の倦怠感、食欲不振、発熱、吐き気、横断などの症状が出現し、血液検査ではAST・ALT(GOT・GPT)やビリルビンの数値上昇などが見られます。

これらの症状が強いほど、免疫の反応も強くなるためHCVは排除されますが、持続感染する人も約70%もいます。自覚症状に乏しいため、早期発見・治療の機会を逃してしまい、慢性化しやすいのがC型肝炎の厄介なところです。なおA型肝炎やB型肝炎のように劇症肝炎を起こすリスクはほとんどありません。

慢性肝炎は5〜10年以上経過すると、約60%が肝硬変と進行し、その後、肝硬変が肝臓がんに進行するリスクは毎年7%程度あります。C型肝炎治療薬は、従来、インターフェロン(IFN)の投与が行われていましたが、2004年からペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が保険適用となりました。

C型肝炎に対するIFN療法は、ウイルスの排除を目的とした根治療法と、ウイルスの増殖を抑制することで肝機能障害の進行を阻止する目的で実施されます。2015年、IFN療法を必要としない飲み薬「ソバルディ」と「ハーボニー」が保険適用となり、高い確率でHCVを排除できるようになりました。

C型肝炎ウイルスと肝機能検査

現在、肝硬変と肝臓がんの発症原因となるC型肝炎ウイルス(HCV)の感染者数は世界で1億7000万人を超えるとされています。日本でも約200万人がウイルスに感染していますが、その半数は感染に気付いていないため、治療を受けることなく、病気が密かに進行している状態にあります。

肝臓は「沈黙の臓器」

世界で最もC型肝炎ウイルスの感染率が高いのがエジプトです。エジプトでは古代から腸、肝臓、膀胱に感染する住血吸虫に悩まされてきましたが、20世紀初頭に住血吸虫を撲滅するため1人当たり10回程度の注射を行いましたが、この注射針の再利用でウイルスの感染が急激に広まったのです。1970年代に住血吸虫に対する経口の抗生物質が登場することで、感染拡大はようやく沈静化しました。

アメリカではHIV(エイズ)による死者よりも、HCVを原因とする肝硬変と肝臓がんによる死者数のほうが多く、ウイルス変異の頻度が高いため、HCVに有効なワクチンの生産は難しい状況にあります。

肝炎を発症すると、肝細胞の近くにある星状細胞が活発化して、コラーゲンを放出することで肝臓の繊細な構造が歪められてしまいます。これが肝線維症です。肝線維症が進行すると、肝硬変になり、最終的には肝臓がんを発症します。HCVが肝臓がんを直接的に発生させるわけではありませんが、肝硬変患者の何割かは肝臓がんを発症します。

肝機能障害の有無は、血液中の控訴の量を検査することで簡単にわかるようになりました。肝細胞が破壊されると、GOT/GPT、ガンマGTPが放出されるので、血液中のこえらの量は、黄疸よりも信頼性の高い診断基準となっています。

肝線維症から肝硬変の進行が早いのは、50歳以上でHCVに感染した人、アルコールを接種する機会の多い人(1日に日本酒二合程度)の人です。慢性肝炎を発症しても、元の健康な肝臓に戻すことは可能ですが、肝線維症と肝硬変を発症したら、元の状態に戻すことはできません。健診などで行う肝機能検査の数値には注意して、アルコール摂取は適量に抑えるようにしましょう。

冬はノロウイルスによる集団食中毒に注意

近年、免疫力の弱い高齢者を中心として、全国で集団食中毒が流行しています。腹痛、下痢などを主症状とする急性胃腸炎ですが、成人では下痢が多く、子供では多くなっています。ウイルス感染後、8時間から1日程度の潜伏期間を経て、これらの症状が現れ、3日くらいで回復します。

激しい嘔吐が主症状

感染の始まりはノロウイルスに汚染された牡蠣などの二枚貝を十分に加熱せずに食べることです。ノロウイルスは同じく食中毒の原因菌であるサルモネラ菌に比べて感染力が強力なため、感染者が1人出ると、嘔吐物や便に含まれたウイルスが同じ施設の高齢者や幼児にも感染し、集団感染を起こします。病院や老人ホーム、幼稚園で起こった集団感染をニュースでよく見るのはこのためです、

ノロウイルスは単純な構造で、脂質の膜を持っていないため、ほかのウイルスに有効な塩素、酸、60度の加熱でも死滅しません。ノロウイルスの感染力を奪うためには、85度以上で1分以上加熱するか、次亜塩素酸ナトリウムで消毒しなければなりません。

一度罹ってしまうと二度と罹ることのない麻疹や風疹などと異なり、ノロウイルスは数十種類も存在するため、何度も感染する可能性があります。ノロウイルスに対するワクチンや治療薬は存在しません。下痢で大量に水分が失われるため、水分補給を十分に行う必要があります。

感染力は強力なノロウイルスですが、毒性自体はそれほど強くないので健康な成人が感染しても、症状が全くでなかったり、軽症で済むケースも少なくありません。そのため感染者が感染に気付くことなくウイルスを周囲に広めてしまうことになりかねません。

また、下痢や嘔吐などの症状が治まっても、回復後1週間程度は便の中にノロウイルスが存在するため、こちらも本人がしない間に感染源となっていることがあります。これを踏まえてノロウイルスによる食中毒が流行する秋・冬は特に流水・石鹸による手洗いをしっかり行う必要があります。